◆取付当初のヘッドユニット このクレスタにはヘッドユニットとしてDATを採用している。 以前の車ではカセットデッキを使用していたが、どうしても録音するカセットデッキとのアジマス(ヘッド角度等)が合わず必ずデッキをバラしてアジマスの再調整が必要な事と、車載用のカセットデッキはほとんどの製品がオートリバース機構になっている為にA面再生時とB面再生時でアジマスが違ってしまう。 その為に両面が同じ音質で聞くには、どこかで妥協点を見つける必要があり納得行かなかった。 もう一つの理由は、カセットデッキは数十KHzのバイアス発振周波数に変調して音声を磁気記録しているが、ハイ上がりで記録してハイカットして再生するRIAA特性に基づいて調整してある。 しかしこのRIAA特性の調整がメーカーや製品でまちまちで、あるデッキでは高域が延びているような感じがしたり、逆に高域がこもってしまったりする。 またこれと同様に、ドルビーのTypeBやTypeCなどもかかり具合がバラバラで使い物にならない他に、音質が変わってしまう物も有った。 その為に当時は高価だったDATを採用する事になった。 このころはクラリオンが先手をきって発売したが、なぜか販売を途中で見合わせて2番手にKENWOODが登場し、ちょうどこの頃に購入計画中だった為に採用した。 ちなみに当時の消費税が無かった頃で、このKENWOODのKDT−99は本体価格20万円で、チューナは別売のKTC−7061を2.6万円で購入する必要があった。 上記右図の上段がDATで、その下段にあるのが同シリーズのグラフィックイコライザーである。 もともと音声ラインに入れるとSN比や歪みが悪化する為に使用せず、1Dだけでは寂しい為の穴ふさぎに付けた割には6.5万円と高価な製品であった。 ◆マルチシステムへの変更 初期システムでは、フロントに35W×2を使用しリアに160W×2を使用してリアはいつでもマルチアンプに対応できるように3ウェイスピーカを組んで有ったものを、一般市販品と自作のCRネットワークにより駆動していた。 しかし、低域が不足しているのと多少音量を大きくすると音が割れてしまう為に、エレクトリッククロスオーバーネットワークとパワーアンプを追加購入しマルチシステムに変更した。 この時に使用したエレクトリッククロスオーバーネットワークは、普通のカタログではお目にかかれない製品でKENWOODのKEC−300(¥38,000)を採用した。 この製品の特徴としては、2ウェイ/3ウェイの切換えはもちろんだが、クロスオーバー周波数が下側30〜800Hzと上側800〜10KHzと30〜10KHzのどこでも設定できる事である。 通常は下側と上側の間には設定できない範囲があるが、この製品はどこでも使用できるのとクロスオーバー周波数が無段可変できる為に実験用には最適であった。 また、低域もモノラルとステレオの切換えとカットオフスロープが−12dB/octと−18dB/octの2種類を切り替えられる。 ただ残念な事に、入力はDINコネクターとRCAピンの両方があるが、出力は全てKENWOOD仕様のDINコネクターだ。 初期の頃は変換ケーブルが無くDINケーブルで配線していたが、このケーブルの音声用シールドケーブルが細すぎて高域の伝送が悪く高域が再生できず、後にDINからRCAピンに変換するケーブルが発売された為にケーブルを張り直している。 この製品の便利なもう一つの点は、中域と高域のクロスオーバー周波数が同じで良ければフェーダが付いており、フロントのフェーダでフロントとリアの出力をコントロールできる。 今回はこのエレクトリッククロスオーバーネットワークを使用して、フロント2ウェイリア3ウェイのマルチシステムを構成している。 ◆マルチシステム最終構成 以前まで使用していたKEC−300のエレクトリッククロスオーバーネットワークではフロントとリアのクロスオーバー周波数が別々に設定できない事と、各帯域の音声レベルはフロントパネルのつまみで可変できるが、肝心なクロスオーバー周波数が本体の上部にありコンソールに収納してしまうと再調整できない為に不便であった。 その為に左図に有るようなJVCのエレクトリッククロスオーバーネットワークであるKS−N31(¥27,000)を見つけフロントとリア用の2台分を1Dサイズとして取り付けて使用している。 この製品は、KEC−300と仕様が似ていて入出力が全てRCAピンになっている為に非常に便利で、本体寸法も1/2Dサイズの為にヘッドユニットと合わせて2Dサイズに収納できる。 ヘッドユニットも以前のKENWOOD製のはデジタルフィルターでない他に故障も出てきていた為に、右図にある様なSONYのDATであるDTX−10(¥120,000)に交換している。 音質的に利用する事をお薦め出来ないが、長時間記録のLONGモードにも対応しているほか、チューナも内蔵している為にコンパクトで便利である。 ◆マルチシステムのまとめ このクレスタでは様々なマルチシステムの実験をし以下の様な結論に達した。 ヘッドユニットに関しては、ナカミチの様な高級品はなかなか手が出せる人が少なく、さぞいい音が出る物と思っていたが、実際今まで取り付けた中で左図のようなナカミチのTD−700を使用している物が有り、これを借りてこのクレスタで再生してみた所、まったく音が悪かった。 確かにアジマスが調整できるのとデュアルキャプスタン構成による走行の安定性は古いテープや色々なデッキで録音して比較したがそれなりの効果は認めるが、DATから比べると全く良くない。 安いカセットデッキならともかくとして、このTD−700は定価で17万円台もする物の為にKENWOODの20万円とSONYの12万円のDATと比較しても金額的には劣らない。 TD−700の上位機種でTD−1200があるが、24万円もする為に比較できなかったが、ここまで金額をかけられるのであればSONYのDAT12万円とホームオーディオ用のDATを14万円で26万円を用意する方を薦める。 又、どうしてもカセットデッキの要求が多い為に、機能面でKENWOODのカセットデッキを使用してみたが、5万円〜8万円のカセットデッキでも十分どころかTD−700よりクリアな再生音が得られてしまった。 そもそもカーオーディオの取付を行うようになったきっかけは、取付工賃が高いとかシステムの構成を販売店に相談しても良く分からないとかが多く、最悪の場合は客が欲しい物とは全く違う物を薦める店も多いらしく、ナカミチだから音が良いのではないのを知ってほしいのと、ユーザーが希望する予算でいかに良い音を出せるかを試す為に取付を始めた。 その為に、詳細システム構成を組みこれらの定価見積もりをし、会社の取引き業者を使いカーショップよりは多少安く仕入れた物をそのままの金額で提供している他に、取付料は無料で材料代を実費で請求している。 ユーザーには製品と取付料で格安になった分を少しでも良いヘッドユニットを購入してもらい、電源やスピーカーケーブルなどにも多少出資してもらう事で納得してもらっている。 エレクトリッククロスオーバーネットワークに関しては、ほとんどのメーカーはコンソールに取り付かないタイプとか、クロスオーバー周波数が無段階で可変できない物が多く、カロッツエリアも候補にあげていたが調整つまみがコインで回す必要があったり途中で生産中止になったりで結局JVCのKS−N31になった。 この製品もかなり昔からあるが、生産中止にならない事を願うだけである。 完全なフルマルチにしなくとも、低域だけを分割してクリアな中域再生をしてもらえれば十分で、この構成だと格安で良いシステムが得られる。 又、パワーアンプはツイータを基準とするとミッドレンジが2倍とウーハが4倍の出力を選択すればかなり強力なシステムが構成できるが、SONYのXM−C1000やXM−C2000の6chアンプを使用した小出力アンプでのシステムでもかなり良い結果が得られている為に、グライコやDSPを考えているのであればこの格安マルチシステムの方が絶対にお薦めである。 スピーカーで特にウーハーは極端に大きい物は当然アンプも大きな物を必要とし、コーン紙が戻ろうとするときの逆起電力に打ち勝つような強力なアンプが必要になる為に、16〜20cmあたりが適当である。 又、極力スピーカーボックスを製作する事をお薦めするが、リアトレイに付ける場合はトランクのバネや板金を大量にカットするわけにはいかないので、その状態により色々な方法を考える必要があるが、できればウーハでミッドレンジが影響を与えられない様にする事が必要である。 メインに戻る 車両関係に戻る クレスタ詳細メニューに戻る |