フロントサスペンションの組立 ◆フロントサスペンションの構造 セルボのフロントサスペンションは左図の様になっており、ダンパー から上の部分は全てダンパー自体に組み付けられた物が車両に搭載され る様になっている。 マクファーソンストラット式と言う構造上、タイヤの振動吸収・抑制 と言う事だけでなく舵取り機構も搭載されている為に多少部品点数が多 く複雑になっている。 動作的には左図F以下がタイヤと同様に回転する様になっており、G にあるベアリングによりH以上の車両に固定される部分とは別々に動く 構造となっている。 そしてその動作による多少の歪や変形はJにあるゴムブッシュにより 吸収される様になっている。 その為にマルチリンク等のダブルウイッシュボーン的な構造の様に、 舵取り機構に左右されずダンパーの上下共に単に固定されている物より は複雑で、各部品の組み付け時には部品の組み付ける順序や取り付け方 向の違いには十分注意して確実に作業する必要がある。 ◆部品の組み立てについて 今回は全て新品部品を使用して組み付けた為に、これまで使用してい た足周りの分解は必要なかったのだが、右図の様に片側だけ一旦分解し て部品の組み付け状態を確認した。 これは、整備書には図解説明も少なくあまりにも簡単に書かれている 為に全く参考にならず、表裏で似た様な部品があると間違えて組み付け てしまう恐れがある。 大半は整備書よりもパーツリストにあるイラストと部品品番から組み 付け順序を割り出してしまえば、あとは部品形状をみれば80%以上の 物は間違い無く組み付けられるだろうと思う。 しかし、同車種の交換作業を行った事が無ければ面倒でも現在装着さ れている物を分解して組み付け状態を見比べながら組み立てる事をお薦 めする。 しかしながら、既に分解・組み付けされている物の場合には間違えて 組み付けられている可能性もある為に注意が必要である。 今回の部品購入でパーツリストのイラストで不要な部品があったが、 その部品が右図の青色で示す部分である。 セルボモードにはグレードが多くモデルも同型のSR−Fourでも 、リアがドラムブレーキの初期型と今回手がけているリアがディスクブ レーキのタイプにPCDが100になった3種類がある。 その為に、この部分の部品は以前若しくは前期タイプに使用されてい たと思われ、今回も車体番号を入れた時と入れない時でも違って出てく ると言う事があった。 その為に、全く違うグレードに別の部品を組み付けた時以外は、でき れば現在使用している車両の車体番号で部品を検索した方が無難だろう 。 また今回は左上図にある足周り部品を全て交換したが、普通はダンパ ーとスプリング以外はそのまま再利用するケースが多いだろうが、でき ればゴム類の消耗品は一緒に交換した方が良いだろう。 その消耗し易い部分を右上図にあるイラストに赤く示したが、一番変 形し易い部分がイラストの上から2番目で右上図にある一番大きなゴム ブッシュである。 ここで車体と足周りとの衝撃や振動を全て吸収する様になっている為 に、右上図のイラストからもわかる様に左側の方が横につぶれて高さも 低くなっている事がわかるだろう。 もしも足周りを分解する事があればこの部分に最も負担がかかる為に 、毎回交換しても良い部分だろうと思うが右上図の古い方でも12年目 の4万キロだが、距離を走っていればもっとヘタっていると思われる為 にそう高価な部品でもない為に予め購入して用意しておくと良いだろう 。 そして舵取りの際に車体側と足周りを回転させる役目をするベアリン グが左図にある黒い樹脂部品で、以前はイラストにもある様な本当のベ アリングだったのかも知れないが、CN32Sでは既に画像にある様な 樹脂部品になっていた。 この内部構造は不明だがここにも車重がかかり回転する為に、押しつ ぶされて破損している可能性がある。 ここも分解してから破損に気付いても標準在庫としている部品販売店 は無いと思う為に、ここも高価な部品では無い事から予め購入して用意 しておく事をお薦めする。 最後に右上図にあるのがスプリング上部の受け皿にスプリングが直接 接触しない様になっているゴム上のブッシュで、ダンパーに付いている 下部のスプリング受け皿には無いのに上部にだけは付いている。 ここもあまり長く使用するとスプリングで押し切られてしまっている 場合がある為に、分解の際には交換した方が良いだろうが下部の受け皿 にもブッシュが欲しい所である。 ◆スプリングを縮める まず部品をダンパーに組み付ける際にはスプリングを縮める作業から 必要となるが、今回は比較的安価な右図の様な2ピースタイプのスプリ ングコンプレッサーを使用した。 一見単純な作業のように見えるがこれが一番危険な作業で、2つのス プリングコンプレッサーのかけ方や縮め具合によっては、スプリングコ ンプレッサーがズレて来て指を挟んだり、最悪の場合にはスプリングか ら外れて飛んでくる危険性がある為に、作業の際には十分に注意して作 業する様にする。 できればコの字型である一体式のスプリングコンプレッサーを使用す るのが望ましいが、10万前後もする為に借りるにもカーショップ等で ないと置いて無いだろう。 CN32Sの場合では右上図の様に2巻きでなく最初に体重をかけて 押しつぶし、3巻き分を挟むようにしてスプリングコンプレッサーをか けると作業が比較的楽になるだろう。 スプリングコンプレッサーは大体180度位置に2つをセットし、ス プリングのコイル形状に直角に合わせ、片側から少しずつ縮めて行く様 にする。 尚、スプリングを縮める際には回す側のスプリングコンプレッサーを しっかり押さえ、グラグラ動かない様にしないとすぐにスプリングコン プレッサーがズレて動いてきてしまう。 また、最後には2つのスプリングコンプレッサーの縮み具合が均等で ある事よりも、コイルの上下先端がなるべく並行になる様にした方が組 み付け易くなるだろう。 スプリングを縮める度合いとしては、実際にスプリングを乗せてみて 左図の様に上皿にスプリング用のゴムブッシュを取り付けスプリングの 段差を合わせて検討する様にする。 その判断基準は、最低でも右図の様にダンパーのピストンロッドにあ る段差が、上皿から完全に突き出す位までスプリングを縮めておく必要 があるだろう。 右図では上皿からピストンロッドの段差が1〜2mm程度出ているが 、これだとよほど気を付けないと組み付けの際に段差が受け皿の下側に 潜り込んでしまう恐れがある他、次から説明する部品関係にもひっかか ってしまう恐れがある。 その為にできれば10mm以上は突き出しておきたい所だが、スプリ ングを縮めれば縮めるほど危険性が増す為に注意して作業する。 ◆スプリングの位置を決める まずはダンパーにピストンロッド部分にゴムブーツを取り付けるが、 今回特注した物には既に図の様な水色のゴムブーツが取り付けてあった 為に純正品は不要であった。 そして左図の様にしてスプリングを縮めたままでダンパーにピストン ロッド側より静かにかぶせ、無理に押し込むとゴムブーツが破損する恐 れがある為に注意して作業する。 スプリングをセットする際にはほとんどの場合に於いてセットするス プリングの上下方向がある為に十分注意して確認してから装着する様に する。 そしてダンパー中央には右上図の様にスプリング受けの皿が付いてお り、従来セルボに付いていたダンパーではスプリング全体が受けられる 丸い皿が付いていたが、今回購入して頂いたダンパーでは右上図の様に 四方がカットされ四角い形になっていた。 スプリングはただ組めば良いと言う物ではなく、左図の様に必ずスプ リングの受け皿にはスプリングの巻き始めにある段差を合わせる部分が 存在する物が多い。 車両によっては巻き始めに段差が付かない様な巻き方をしてある物も 存在するが、今回のセルボでは図の様に段差が付いているのが図からわ かるだろう。 この部分の段差にスプリングの巻き始めをしっかり合わせないと、せ っかく縮めたスプリングが上方向に上昇してしまう事になる為に、以下 の作業で取り付ける部品がうまく組み付かない可能性がある為に、しっ かりと合わせ目を確認する様にする。 スプリングの上部も左図を見てもわかる様にスプリングの巻き始めが 離れており、右図の様に上皿にもこのスプリングの巻き始めを合わせる 為の段差が設けてある。 その為に、ここでもスプリングの段差をしっかり合わせないと上皿が 浮いてしまい以下から組み付ける部品が上手く組み付かない恐れがある 為に十分注意する必要がある。 この時点で再度、上記の『スプリングを縮める』で説明してある様に ピストンロッドが十分に飛び出さない場合には、スプリングの段差が上 手く合っていないかスプリングが十分に縮められていない可能性がある 為に十分確認した上で以下の作業に移る様にする。 ◆ストラットの上部を組み付ける スプリングの上皿を乗せたならば、その上から図の様な黒い樹脂製の ベアリングをセットするが、左右の図を見比べるとわかるが取り付け方 向がある事に注意する。 左図を見ると中央部分に突起が見えると思うが、こちら側がスプリン グの上皿へと向け、ピストンロッドとの隙間に入り込み上皿と均一に接 触する様に取り付ける。 この樹脂ベアリングを乗せたならば、突起部分が浮いて飛び出し組み 付け位置がズレない様にしっかりと固定したままで次の部品を組み付け る様にする。 そしてその樹脂製のベアリングへ均一に力がかかる様に厚手の平ワッ シャーの様なベアリングシートをセットする。 この図からはよくわからないかも知れないが、このベアリングシート は全くの平らではなく、若干形状が違い樹脂ベアリングを包む様な方向 に向けて取り付ける様にする。 その段差が左図を良く見てもらうと外側から1/3の位置あたりに輪 になった傷の様な部分が見えると思うが、ここを基準に実際には内側よ り外側が全体的に倒れ込んでいる様な形状になっている。 そして次にマウントシートと呼ばれる物を図の様に組み付け、樹脂ベ アリング部分をスッポリと覆ってしまう感じにする。 本来はこのベアリングシートを装着し、左図の様になった時点でもピ ストンロッドの段差が見える様にするのが望ましい。 しかし、なかなかそこまでスプリングを縮めるのは大変な為に樹脂ベ アリング自体がピストンロッドの太い部分で支えられていれば大丈夫で ある。 それは、右上図の様にマウントシート中央にある穴径でマウントシー ト自体がピストンロッドの細い部分で位置が決まる様になっている為に 、その下側になるベアリングシートを包み込み自動的にベアリングシー トも位置が決まってしまう為である。 そして車両に固定する為のボルトが2本飛び出ているサポートと呼ば れる金属製のブラケットの突起部分に、右図の様にゴム製のブッシュを 予め組み込んでおく。 それからマウントと呼ばれる左図の様な大きめなゴムのブッシュを突 起側を内側にして差し込んでおき、あとは右図の様に組み付けるだけで ある。 その際には突起側に取り付けたゴムブッシュはゴムの溝にサポートが ピッタリと挟み込まれる構造の為に問題無いが、サポート内側に取り付 けるゴムブッシュはただ差し込んであるだけの為に落下し易く、右上図 の様に乗せる際に内側に差し込んだだけのゴムブッシュが落下して位置 がズレない様に十分注意して組み付ける様にする。 サポートブラケット中央の穴から左図の様にのぞくとピストンロッド が飛び出して見えるが、ロッドがサポートブラケットのほぼ中央になる 様に大体調整しておく。 その凹んだ部分に右図の様なサポートストラットインナーと呼ばれる 金具を差し込む訳だが、この金具中央には右図の様なピストンロッドと 同様な半丸形状の穴が開けられている為に、お互いの位置を合わせて差 し込む様にし、これからピストンロッドに取り付けるナットを締め付け る際にピストンロッドが回らない様にする為の固定金具である。 このサポートストラットインナーは釣鐘状になっており、左図の様に 突起している側をサポートブラケットに差し込みピストンロッドが十分 突き出てくる様にする。 本来、純正ダンパーを使用した際には右図の様なスプリングワッシャ ーをセットして組み付けられているのだが、今回はエナペタル製の特注 ダンパーを購入した事によりこのスプリングワッシャーは不要となる様 である。 今回購入したエナペタル製の特注ダンパーには予め左図下部の様に、 ナット中央に樹脂製の緩み止めが付いたナットが予め装着されていた。 その為に純正ナットやスプリングワッシャーは使用せずに、付属され ていた緩み止め付きのナットをそのまま使用して組み付ける。 あとは右図の様にしてピストンロッドにあるナットを締め付ければ組 み付けが完成する。 ◆ピストンロッドのナットを締め付ける ナットを締め付ける際にはナットだけ回してしまうとピストンロット が回転して全く締め付けられなくなる恐れがある。 その為に、右図の様にサポートストラットインナーにある8角形の部 分にモーターレンチをかけて遊ばない様にしておく必要があるだろう。 しかし実際に組み付けてみると、ゴムブッシュ類が新品のせいかモー ターレンチを使用せずともサポートブラケット自体を手で押さえ付ける だけでもしっかりと締め付けられるだろう。 逆にモーターレンチ等でしっかり固定し過ぎるとサポートストラット インナーの回り止め用の半丸部分がこじり取られてしまい、その時点で ピストンロッドのナットが取り外し不可能となってしまう。 実際、よくスプリングを縮めなかったと言う事も重なって、ナットを 締め付け過ぎてサポートストラットインナーの回り止め用の半丸部分が こじり取られてしまい、組み付け直しができなくなりダンパーを修理に 出してしまった。 この時にはピストンロッドを固定しないと取り外せない状態になり、 ピストンロッド自体の交換で2.5万円と言う痛い修理費がかかってし まっている。 その為に、組み付け時にはスプリングを十分縮めた上で組み付ける事 をお薦めする。 今回は交換部品としてピストンロッド用のスプリングワッシャーとナ ットも純正部品で用意していた為に、スプリングワッシャーは使用しな かったがナットは右図の様に2重ナットにしておいた。 本来、2重ナットは緩み止めにするものなのだが、ここでは単に新品 のナットが余り捨てるだけだった為にピストンロッドのネジ部分にホコ リが付き難い様にカバー代わりに取り付けて見た。 この様な使い方をすると、今回購入したエナペタル製特注ダンパーの 場合には丁度1〜2山のネジ溝が出るだけになる。 ◆スプリングコンプレッサーを取り外す 組み付けが終わったならば、後はスプリングを縮めているスプリング コンプレッサーを取り外せば完成である。 しかしここからがまた大変な作業で、ダンパーにスプリングをセット する際にも説明したが、スプリングを緩める際に結構な力をかけて作業 する必要がある為にどうしてもスプリングが本来の位置からズレてしま う可能性が大きい。 その為に、右図にある様にスプリング下部と左図のスプリング上部を 常に監視し、少しでもズレたらスプリング等をひねって本来の位置に戻 しておく様にする。 作業の際には手足をしっかりと使い、スプリングがずれない様に作業 するのが望ましく、ある程度スプリングが広がってくると手で修正しよ うとしても回せなくなる恐れがある。 その為に基本はスプリングコンプレッサー自体をしっかりと足で踏み 付けておき、スプリングやダンパーが移動しない様に細心の注意をはら って作業する必要がある。 ある程度スプリングが開いてしまえば、あとは多少ラフに扱ってもス プリングが遊んで受け皿の段差から逃げる様な事は無いだろう。 その際にも片側だけ一気に緩めてしまうと、どちらかのスプリングコ ンプレッサーが吹っ飛んでしまう可能性があり危険である。 その為に今回使用した様なスプリングコンプレッサーの場合には、必 ず均等に変形する様に締め付けも取り外しも作業する必要がある。 これらの作業は左右のダンパー共に全く同じで、同じ作業を2度繰り 返す事になる。 メインに戻る 車両関係に戻る セルボモードメニューに戻る オーバーホールメニューに戻る 第四段メニューに戻る 足周りメニューに戻る |